博士前期課程 心理学コース


コースの特色


「心理学コース」では、認知心理学、社会・産業・組織心理学、犯罪心理学、老年心理学、心理統計学などに関わる領域を充実させ、現代社会の問題に対応する人材と研究者育成を目指します。

コースの特色

「心理学コース」では、認知心理学、社会・産業・組織心理学、犯罪心理学、老年心理学、心理統計学などに関わる領域を充実させ、現代社会の問題に対応する人材と研究者育成を目指します。

担当教員名、専門領域、主な研究指導内容

専門領域

教育心理学、心理統計学(教育心理学・心理統計学に関する講義)

研究指導内容

本学大学院は、教育評価に関連したテスト理論・心理統計理論・データマイニングについて学ぶことが出来る数少ない教育機関の1つです。
テスト理論については、近年、心理尺度短縮版の作成に頻繁に利用されるようになった、項目反応理論(Item Response Theory, IRT)について、理論と分析技術を学びます。
また心理統計理論については、心理統計に関する基礎理論(記述・推測統計と実験計画の基礎)の習熟の後に、構造方程式モデリング(Structural Equation Modeling, SEM)を用いて、様々な心理データ(縦断データ・名義的データ・自由記述データ・評価者データ)に対応した統計モデルを考案・検証する方法を学びます。複数の研究結果を統合して心理療法の効果を検証するメタ分析や、インタビュー調査の結果を定量的に評価するテキストマイニングについても学ぶことが出来ます。
データマイニング(Data mining)とは、大規模データから有益な情報を抽出する手法の総称です。例えば、OECDの国際学力比較調査PISAが提供する数十万件の大規模心理・学力データから、自己組織化マップ・決定木・社会ネットワーク分析といったデータマイニング手法を利用して、教育政策・教育実践において有用な仮説を探索する方法を学びます。
2014年度は教育心理学のゼミはありませんが、統計関連の授業を履修することで、上述の方法を学ぶことが出来ます。実習は「統計解析環境R」を利用して行います。SPSSやSASといった商用ソフトウェアでは出来ない分析が「R」では可能ですから、これから研究者を目指す皆さんは、大学院在学中に是非修得して下さい。基礎領域・応用領域の枠にとらわれず、データ解析をきちんと学ぼうとする院生諸君の受講を期待しています。

専門領域

認知心理学(記憶を中心に、人間の自己の認知の理解、メタ認知の発達の観点から研究指導)

研究指導内容

認知心理学のカバーする領域は年々拡大し、心理学の他の領域や他の学問領域とも重複してきています。これは、人間が環境にうまく適応し、賢く生きていくために依存している認知能力が非常に複雑、かつ、重要だという認識が高まってきているからです。そこで、本学では、記憶、注意、言語、思考などといった従来の研究領域や対象者を限定せず、認知的な現象や効果の解明といった基礎的なアプローチから、物の使いやすさの評価といった応用的なアプローチまでを包含する幅広い認知心理学に関連する研究を行うことができます。研究方法は主に実験と調査です。実験装置には従来のPCのほか、課題遂行時の視線が計測できるアイトラッカー(モニター型とメガネの装着型)もあります。その装置を使えば、様々な面白い研究ができると思います。
 授業担当者はこれまで「画像記憶」や「ソース・メモリ」などのエピソード記憶についての基礎的な研究のほか、記憶の自己効力感と実際の認知パフォーマンスの関係とその生涯発達といった「メタ認知」についての発達的な研究、また、自己効力と学力の関係、HPの使いやすさといった応用的な研究も行ってきました。
大学院で学べることは限られています。もっとも大切なことは興味のある研究テーマについて上手に問題設定し、研究を進め、期限内に仕上げて発信していく、という一連のプロセスを遂行できる能力を修練することです。研究による新たな現象の発見も重要ですが、物事を論理的に考えて、必要な情報を収集し、目標に向って研究を遂行し、結果を他者にわかりやすく伝える、また、その過程でプログラミングや統計ソフトを利用しながらデータを収集、分析していく能力は社会に出てからも必要です。これまでの修了生はこのような学びを活かして、研究の道に進む人のほか、学部卒業時の時には選択肢になかった企業に就職された方がいます。そのような自己鍛錬の場を提供し、みなさんと一緒に学んでいければと思います。

専門領域

産業・組織心理学、社会心理学
(自己ならびに他者関連情報などの社会的情報処理過程における感情状態の影響とそのプロセスの研究指導)

研究指導内容

自己ならびに他者関連情報や、広告などの社会的情報に対する人の情報処理過程、またその情報処理過程に影響を与える要因に関して、実験や調査を行い検討することができます。たとえば他者に関する情報を人が見る場合、その時の感情状態によって注目する情報の側面が変わる可能性があります。この問題を研究で取り上げるとすれば、実験参加者の感情状態を導出する操作の後、対象情報を呈示し、アイトラッキング・システムを用いて視線計測をするという実験手法により、実証的に検討することが可能です。もしもそのデータから、人は肯定的な感情状態にある場合、他者の肯定的な側面により注目することが明らかになれば、組織における人事評価などへの知見の応用可能性に関しても検討することができるでしょう。大学院での学びを通じて、心理学を社会で活かすための思考力と実践的方法を身につけて頂きたいと願っています。

専門領域

老年心理学、質的心理学
(高齢者への回想法等の心理的援助や過去を語ることの心理的意義、青年期以降の生涯発達に関する研究指導)

研究指導内容

本学の老年心理学のゼミでは、高齢者に過去の思い出を想起するように促すことで心理的な効果を促す対人援助手段である回想法の実践方法について指導を行います。回想法は1960年代に精神科医のButlerに提唱され、今日では日本でも臨床・介護・福祉など高齢者に関わる様々な場面で実践されている援助技法です。近年では少子高齢化が急速に進み、65歳以上の高齢者の割合は今後も増加する見込みであることから、認知症の予防効果が見込まれる援助手段の開発や検討は社会的なニーズにあう重要な研究テーマです。
また本ゼミでは、高齢者に限らず人の語りについての質的検討にも取り組んでいます。
心理学における従来の量的検討に対して、近年では様々な心理的対象を数量化せずに「語りそのもの」を研究対象として扱う質的心理学やナラティブ心理学が大変注目を集めています。本ゼミではナラティブ分析やM-GTAなどの代表的な質的研究方法に取り組み、今後の社会における幅広いニーズに応えられる研究者や実践家の育成を目指します。

専門領域

社会心理学、社会的認知
(対人認知・対人コミュニケーションにかかわる諸現象のメカニズムを、社会的認知の視点から研究指導)

研究指導内容

本学大学院の社会心理学では、主に社会的認知の視点から社会現象の心理的な理解を進めることを目指しています。社会的認知とは、認知心理学の研究手法、例えば記憶、反応時間、身体動作などの指標を社会心理学の諸現象の解明のために活用した新たな視点からの社会心理学と言えるでしょう。具体的に私の研究室では、反応時間の測定のためにiPadを制御するためのプログラムを開発しています。また、身体動作を記録するために特殊なカメラを用い、動作解析のためのソフト開発と測定を行っています。動画刺激を作成するためにデジタル編集用のソフトなどの使用方法に習熟することも求めています。
このように、本学大学院の社会心理学の研究室では、社会心理学の知識だけでなく、社会心理学の研究を発展させることに役立つ、もう1つ別の技術を修得することを院生に求め、新たなアイディアの創造を目指して研究に励んでいます。

専門領域

司法・犯罪心理学,捜査心理学(犯罪心理学に関する講義)

研究指導内容

心理学の知見を用いた捜査支援に関する研究を行います。犯罪捜査に関わる心理学は多岐にわたり,例えば面接法の分野として,子どもへの面接や被疑者の取調べといった捜査面接,およびそれらの訓練に関する研究に取り組んでいます。
他にも,犯人像推定,連続事件を同定する犯罪リンケージ(事件リンク分析),犯人の活動拠点を推定する地理的プロファイリングといった被疑者の検挙を目指す研究,日本で最先端の技術が現場活用されているポリグラフ検査(隠匿情報検査: CIT),長年多くの研究者が取り組んでいる目撃証言などがあります。
これらのテーマでは様々な研究法・機材を活用でき,VR(バーチャル・リアリティ)を使った目撃証言研究,生理指標(心拍数,皮膚電気活動など)によるCIT,アバターへの面接シミュレーションを用いた捜査面接のリモート訓練などが可能です。
こうした犯罪と向き合う現場を支援する研究に関心がある方の受講を期待しています。

*博士後期課程兼任教員

修士論文について

大学院における修士論文のタイトルの一例です(一部は担当教員が教育・発達心理学コース所属時)。※過去5年分の抜粋

川端 一光

  • 海馬・内側前頭前皮質間の振動同期に及ぼす視床結合核の効果

  • 養育が子どもの向社会的行動に与える影響 ―共感性を媒介して―

  • 項目母数Driftが長期的なIRTテスト運用に与える影響とその対処法

金城 光

  • 視線のカスケード現象の生起条件の検討

  • シャイネスおよびシャイネス態度が変化する可能性―顕在的・潜在的測度を用いて―

  • 記憶検索時の眼球運動の役割の検討―視線の制限とLAN現象に着目して―

  • ソフトテニス競技者の熟練に関連する心理的要因と知覚認知スキルの検討

田中 知恵

  • 時間的距離が自己の未来の知覚に与える影響―想像の抽象度の観点から―

  • 上司のリーダーシップ行動とその指示の適切性が部下の上司への評価に与える影響―アルバイト部下の視点から―

  • 女子大学生が月経時に求めるソーシャル・サポート―サポート期待とサポート知覚の不一致に着目して―

  • 被視点取得の知覚、感情や思考の伝達および被視点取得欲求が対人認知に及ぼす影響

花田 安弘 (2020年度まで担当)

  • 古典的恐怖条件づけの消去におけるラットの辺縁下皮質破壊の影響 ―消去文脈との関連―

  • 海馬・前頭前皮質間シナプス伝達に及ぼす海馬シータ波の効果

  • 求心性及び遠心性視覚系情報伝達に及ぼす海馬シータ波の効果

宮本 聡介

  • 対人コミュニケーション時の無意識的な身体的情報交換 ~模倣行動に着目して~

  • 社会的アイデンティティの共有状態がeWOMの認知に及ぼす影響

  • 在日中国人留学生のソーシャルサポートの利用状況―日中文化差の視点から―

  • 自発的特性推論における各種性格特性の処理の差異の検討

大学院進学を考えているみなさんへ~修了生からのメッセージ~

齋木 彩

2019年3月修士課程修了。
現在、株式会社マクロミル グローバルリサーチ部

ソリューションユニット勤務

リサーチャーという仕事は、お客様の課題や仮説に対して調査・分析を行い、答えを出し、今後のアクションへの提案を行います。

鈴木 望美

2019年3月修士課程修了。
現在、NTTテクノクロス株式会社 IoTイノベーション事業部

第一ビジネスユニット勤務

IT企業なので、情報系の出身者が多い会社ですが、心理学研究科で学んだ「仮説をたてる力」「実験計画をたてる力」は強みであると思います。

齊藤 俊樹

2016年3月修士課程修了。
現在、東北大学大学院医学系研究科医科学専攻博士後期課程在学中

私が所属している医学系研究科には、医学・商学・生物学など様々な専門分野を持つ研究者が所属しています。異なる専門性を持つ研究者たちとコミュニケーションをとるときに、明治学院で学んだ心理学・統計学のしっかりとした知識が役に立っています。

須田 望

2019年3月修士課程修了。
現在、株式会社日経リサーチ 統計調査本部 統計調査部勤務

一つのテーマに対して長い時間をかけて、自分が納得するまで向き合うことはとても楽しかったです。社会人になって感じることは、自分の納得感を得ることと利益を出すことの間の相関は高くないということです。研究をする、ということは貴重な体験だと思います。

心理学コース専門用語リスト

心理学を専門とする学部生・院生の皆さんに知っておいていただきたい用語リストを掲載しています。
以下のURLからリストのPDFをダウンロードすることができます。